催眠療法とは


催眠療法では、催眠誘導によって意識状態を変容させ、自我の働きや緊張を弛め、心身を深くリラックスさせることができます。

催眠状態では、普段では体験できない心地よさを味わったり、イメージを描きやすくなったり、過去の記憶を想起したりすることができます。子ども時代に退行したり、過去世(とおもわれるようなイメージ)を想起したり、異次元のような宇宙空間を旅するなど、日常とは異なる意識状態で、トラウマが癒されたり、新たな洞察を得られることがあります。

ただし、催眠療法は魔法ではありません。催眠療法がとてもよく合う方もいれば、あまり得意でない方がいるのも事実ですので、ご了解ください。過大な期待は抱かずに受けてみるのがよいでしょう。不快催眠状態には入れなかったとしても、日常意識では得られない体験や理解が進む場合があります。



☆現在、催眠療法は原則として行っておりませんが、強いご希望のあり、必要と思われる場合にははお受けいたします。
☆以前、富山テレビから前世療法の特集で取材を受けました。その様子こちら


催眠療法に関するQ&A


Q1.催眠療法とはどんのものですか?

 催眠療法では、セラピストがある種の誘導にすることによって、相談者は深いリラクセーション状態へと導かれたり、日常生活を送っているときとは少し違う意識状態に導かれていきます。このような特殊な意識状態は、催眠状態とか、トランスと呼ばれています。トランスにはいると、たいていはとても心地よく、開かれた心の状態になるので、心の深層(潜在意識とか、無意識と呼ばれています)に、より直接的に接近することが可能になります。トランスでは、意識的な統制が弛んできて、普段は意識することのできない感情や記憶が湧いてきたりします。このことを利用して、さまざまなセラピーが可能になります。たとえば、普段私たちが意識することの困難な、無意識の領域にある心の傷(トラウマ)や条件づけを解放することによって、さまざまな問題を解消することができたりします(その他のメリットはpartⅡを参照してください)。

Q2.催眠状態(トランス)とはどんなものですか?

 私たちは毎日さまざまな意識状態(=変性意識状態)を誰でも体験しています。たとえば、寝入りばなや起き抜けにはうとうとしていますし、なにか大好きなことに没頭しているときは時間のたつのを忘れていたりします。あるいは、瞑想しているときや、サイケデリクスを服用しているときなども、ある種の変性意識にあります。催眠状態とは、催眠誘導によって引き起こされた、一種の変性意識状態のことです。催眠状態になると、その深さによっても違いがありますが、たいていはとても心地の良いものです。身体と心がゆったりと弛むことによって、深いリラクゼーション感が得られるでしょう。そして、催眠状態に入ることによって、十分な休息効果があるだけでなく、自然治癒力が高まったり、自然と心身の安定が図られたりと、さまざまな治癒効果はかなりのものがあるのです。 


Q3.誰でも催眠状態にはいることができるのですか?

 催眠状態に入れるかどうかは、その深さも含めて、個人差があります。また、そのときのコンディションや、モチベーション(動機)によっても違いがあります。すぐに深い催眠状態に入れる人もいれば、浅いところでとどまる人、なかなか催眠状態を体験できない人など、さまざまです。しかし、新しいさまざまな催眠の技法を用いますので、ほとんどに人はある種の催眠状態に入ります。また、回数を重ねて実践すれば、トランスに入ることに上達していきます(上達すれば、速く、深く入れるようになります)。   


Q4.どんなひとが催眠にかかりにくいのですか?

 特徴はいくつかありますが、催眠療法にひどく警戒していたり懐疑的である方、普段から不安感や緊張感が強くてリラックスできない方、人を信頼できない方(特にセラピストを信頼できない)などはかかりにくいことがあります。
 まず、催眠療法に懐疑的な方は催眠を受ける必要はありません。疑問がある場合には、納得するまでセラピストと話し合うのがよいかと思います。
 不安や緊張が強すぎてなかなかリラックスできない方の場合、臨床動作法によって、身体と心を弛める感覚を覚えてから催眠療法にはいるという方法があります。
 他者に対する不信感が強い方の場合は、まず対話による心理療法でその問題を扱って、ある程度セラピストを信頼できるようになってから催眠療法を体験してみるのも一法です。また、セラピストがどうしても信用できないと感じたら、他のセラピストをさがすのがよいでしょう(ここは、ご自身の直観を大切にするのがよいと思います)。
 ただし、催眠療法を受けたい、という気持ちがあれば、さまざまな誘導法によって、数回のセッションを受ければ、まずほとんどの方はある程度の催眠状態にはいることができます。


Q5.催眠療法ではどんな問題でもすぐに解決できるのでしょうか?

 催眠療法では、トランスの深いリラクセーション効果がありますが、それに加えて、無意識の領域に直接的に入っていくので、非常にパワフルな技法です。そこでは、深くこころを変容させる体験が起きやすいのです。また、普段気づいていなかったり出せなかった感情が湧き出てきて、カタルシス効果によってすっきりすることもしばしばです。さらに、自分の感情や生き方について、新たな深い洞察や気づきを得られることもよく起こります。
 しかし、他の心理療法と同様、もちろん催眠は万能薬ではありません。催眠状態とはいえ、あまりにつらすぎて受け止められないような体験はなかなか想起できなかったり、そこに到達するために、時間がかかる場合もあります。ですから、催眠療法によって、人生の難しい問題がすべて一気に解決できると思いこんでしまうのは、過剰な期待というものです。どんな問題にも、踏むべきステップというものがあるのです。催眠がすべてを解決してくれるのではなく、自分がよりよい生き方をするために、催眠という手段を使うのだという意識が必要です。


Q6.催眠療法には危険はありませんか?

 催眠療法に適していない方に催眠誘導をすると、危険な場合があります。たとえば、抑圧された感情のエネルギーが非常に強かったり、現実的・客観的認識力が弱い方、統合失調症や潜在精神病の方などは、パンドラの箱を開けたようになって、むしろ悪化させてしまい、収拾がつかない場合があります。このような方には、もちろんこちらからあらかじめお断りすることにしています。そのため、催眠療法に入る前の面接は、とても重要なのです。


Q7.催眠状態での出来事は覚えていますか?また、勝手にあやつられたりしませんか?

 催眠状態に入ると、、とてもリラックスして心身がゆるんできますが、同時に非常によく目覚めてもいます。そして、トランスでは、催眠中の体験がしっかりと記憶に残ります。場合によっては、日常生活よりも鮮明で、細部における気づきがあり、強烈な体験をすることもしばしばです。また、意志がなくなるということもありませんので、嫌なことを無理矢理させられるということは絶対にありません。トランス状態でも、自分が不快だと思えば、それを無視したり、断ることもできるのです。むしろ、「もう少しこの場面を味わっていたいのです」、「あちらの方が気になって、ちょっと行ってみたいのですが・・」、など催眠中でもセラピストにどんどん注文を出していただいた方が、より満足度の高い体験ができるでしょう。セラピストは、破壊的な暗示を与えたり、価値観を吹き込んだりはしません。対話による心理療法のときと同じように、あくまでも相談者の主体性(意識だけではなく無意識の主体性も含める)を信頼して、それを中心に進行してまいります(ただし、場面設定などの誘導は積極的に行います)。


Q8.催眠療法を受ける際に、気をつけることはありますか?

 著しい睡眠不足や過労状態にある方は、催眠ではなく睡眠になってしまいがちですので、ある程度コンディションを整えていらっしゃることをお薦めいたします(眠ってしまった場合には、恐縮ですが、起こさせていただきます)。いうまでもなく、お酒やドラッグの影響が残っている場合は、催眠療法はできません。また、催眠に期待を抱くことは大変結構ですが、あまりに期待がふくらみすぎてしまうと、かえって力んでしまうことがあるので、出てくるものに身を委ねるつもりで受けるといいと思います(積極的な受動的態度がいいのです。なかなか難しいですが・・・)。



年齢退行催眠


Q9.年齢退行催眠とはなんですか?

  催眠状態にはいった時に、誘導に従って、過去にさかのぼっていき、さまざまな体験をすることです。ある人は、いきなり苦しい思い出がでてきてしまうこともあります。そんな場合のために、まずイメージで、ゆっくりくつろげる場所で一休みしてから、退行するなど、いろいろ工夫があるので、安心して自分の過去を再体験できます。退行催眠に入ってから、どのような体験が蘇るのかはあらかじめ知ることはできません。まったく忘れていた思わぬ記憶がよみがえることも少なくありません。


Q10.年齢退行をするとどんな効果があるのですか?

  催眠の中で年齢を退行し、心の傷(トラウマ)の原因となった出来事を再体験できると(特に情緒的にも体験すると)、それだけでカタルシス(浄化)が起こり、それに関連する現在の問題や悩みが軽くなったり、消失する場合があります。
 あまりにも辛い体験が蘇(よみがえ)ってしまった場合には、安全な場所からそれを眺め、しっかり受けとめられるよう、適切に誘導します。たとえば、いったん心地の良い場所に避難して気持ちを整えたりします。また、受けとめきれないほど辛い体験は、受けとめる準備状態が整うまで、催眠状態にあっても想起されないのが普通です。
 再体験するだけでは問題が解決しない場合には、トラウマが発生しないようなイメージをつくってもらいます。そうすることによって、客観的な過去はもちろん変わりませんが、心の中での受け止め方は明らかに変わります。そうなると、トラウマからの影響が減少し、肯定的な変化が起きるのです。


Q11.催眠中に思い出したことは、本当にあった事実なのでしょうか?

  催眠中に想起される出来事は、事実であることももちろんありますが、必ずしも客観的な現実とは一致しない場合があります(この点は、非常に大切なことなので、前世イメージ療法でも詳しく説明してあります)。しかし、想起されたイメージは、心の中の様子(心的現実)を反映しているので、それを体験し、ワークをすることは、こころの癒しと成長につながっていくのです。



前世イメージ療法 


Q12.前世療法とは何ですか?

  前世療法では、年齢退行からさらにさかのぼり、生まれる前や、過去生にまでもどっていきます。そこでさまざまな再体験や、ワークをすることによって、現在の生き方への指針を得ることができます。『前世療法』『前世療法2』『魂の伴侶』『魂の療法』(いずれもPHP研究所)の著者であるブライアン・ワイス博士によって有名になった方法です。『前世療法』には、退行催眠では解決しなかった症状が、前世にさかのぼることにより完全に治癒された例など、多くの驚くべき事例が紹介されています。


Q13.前世療法では、どんなことが起こるのですか?

  異なる時代や場所での出来事がイメージにでてきて、催眠状態のなかで(再)体験をすることになります。人によっては、非常に鮮烈な体験をします。そのことが、今生の問題への解決やその糸口が得られることがあります。そして、いわゆる死後の体験が蘇ったり、神秘体験のようなことが起きる場合があります。ワイス博士の方法に則って誘導すると、確かにこれらの体験をする方は、それほど珍しくはありません。たとえば、親しかった死者と対話をしたり、過去生で学んだことをふりかえったり、世代を超えた知人(いわゆるソウルメイト)が誰かを悟ったり、過去生の自分から今の自分へのアドバイスをもらったり、・・・などです。


Q14.前世があるなんて信じられないのですが?

  「前世が本当に存在するのか」という疑問が湧くのは当然ですね。今いえることは、前世を想起させるような催眠誘導をすると、多くの人が時代も場所も異なる人生を体験する・・・ということです。これは疑う余地のない事実です。それを前世と受け取るか、想像力の産物と取るかは、体験された各人にお任せすることにしています。


Q15.前世療法って、いかがわしくありませんか?

  たしかに、いかがわしいですね(笑)。こういう響きがたまらなく好きな方もいるでしょうし、頭ごなしに否定したくなる方も少なくないでしょう。たしかに現時点では、前世療法は、日本では、学問的にはまだ検証されておりません。現在日本では、臨床心理学の専門知識を持ったセラピストで前世療法をおこなっている方はほとんど皆無です。文献についても、はじめから前世を前提にした、批判的・合理的視点の欠落した精神世界系のものが多く、合理的な目で検証された文献はきわめて少数しかありません。当相談室では、前世療法を冷静で中立な姿勢にたって、臨床心理学の知見に基づいて実施しております。ちなみに、当セラピストは、日本で唯一の、前世療法に関する学術論文を執筆しています。(「『前世療法』の臨床心理学的検証:その問題点と可能性」『トランスパーソナル心理学/精神医学』Vol.5 No.1,p66-76, 2004.
→石川勇一『心理療法とスピリチュアリティ』勁草書房の第四章の所収)。
 また、必ずしも全員が前世のイメージを見ることができるわけではありませんが、上記のさまざまなワークを臨機応変に取り込むことによって、心の癒しという視点から見ると有意義なプロセスを体験できる場合がほとんどですので、ご安心ください。


Q16.前世っていうけど、それは単なる想像の産物ではありませんか?

 これは非常に重要な質問です。これについては、やや詳しくお答えいたしましょう。
 Q11でも申し上げたように、催眠中には客観的現実とは合致しない記憶(フォールス・メモリーと呼びます)が想起されることがあります。実際、催眠中によみがえった記憶(たとえば父親に虐待されたなど)は裁判では証拠として認められません(実際にしばしば客観的証拠とくいちがうことが多数の事例で検証済みだからです)。また、米国の複数の心理学会は、催眠中の記憶を早急に客観的出来事としてとらえることを足並みをそろえて否定しています。しかし、日本で前世療法をおこなっているセラピストはこのことをほとんど知らず、危険な状況にあるといえます。相談者が前世を見ることを強く期待し、セラピストもそれを煽って誘導すれば、容易に偽りの記憶としての前世体験ができてしまいます。しかし、それでは興味本位な単なる「遊び」でしかありません。おまけに、安っぽい妙な世界観を身につけてしまうことにもなりねません。暗示による一時的な改善効果はあっても、本質的な治癒は、それでは決して起こらないでしょう(逆に悪化することさえあるでしょう)。当然、前世療法でもこのことは当てはまると推測されますし、実際に、前世療法で想起される記憶のなかにも、明らかに想像の産物が入っている場合もあります。
 ただし、だからといって、すべての前世のイメージが想像の産物かというと、これもまた疑問が残るのです。すべて切り捨てる根拠もまた同様にないのです。想像とは考えにくい、不思議としかいいようのない記憶が想起することも少なからずあります。ワイス博士が『前世療法』で詳細に紹介しているキャサリンの事例などは、現実との符号、見事な症状の回復、さらにはマスターとよばれる霊的存在の驚くべきメッセージなど、記述が嘘でなければ、疑う余地がない報告です。
 したがって、実際に前世を見ているかもしれない人、真正な神秘的な体験をする人が実際にいると考えられるために、当相談室では、前世療法を「前世イメージ療法」というかたちで、実施しているというわけです。


Q17.「前世イメージ療法」とはどんなものでしょうか?

 前世イメージ療法とは、簡単に言えば、「前世」を一種のメタファー(比喩的表現)としてとらえ、心や魂の癒しと成長のために、さまざまなワークを複合的に用いた統合的なイメージ療法のことです。つまり前世イメージ療法は、前世の客観性はあえて不問にしながら、「前世」という文脈にのった一種のイメージワークなのです。その際、価値観を含んだ誘導を避け、なるべく中立なスタンスで進行します。前世のイメージが体験された場合には、押しつけのない、オープンな体験の解釈と受容を促します。前世イメージ療法では、催眠状態における前世体験も、心や魂の現実を反映したイメージかもしれないという視点を忘れません。問題の原因が前世にあるなどと、安易に決めつけることなどは決していたしません。前世が間違いなく存在するとか、問題の原因が前世にあるなどという絶対的な前提は一切おかないということです。もちろん、それが本当に前世である可能性も決して排除しません。むしろ、深いしっかりした体験をされた場合には、それを前世と確信される方も多いでしょう。
 セラピストの仕事は、前世かどうかを判定したり、権威的に霊的教えを説くことではなく、相談に来られた方がよりよい生き方になるのを援助するだけですなのです。
 このような安定したスタンスにたった「前世イメージ療法」によって、安全で、より信頼できる地に足の着いた体験ができるようになるのです。