臨床動作法とは

 
臨床動作法は、身体の慢性的な緊張に気づき、
自分でその無駄な力を抜くことを覚える技法(心理療法)です。
 
身心の緊張の強い方、いつも体調が悪い方、
姿勢が悪い方、座るのが苦手な方、
などは一度試されるとよいと思います。
大学の授業でも毎年教えて、よい効果を上げています。
 
座るのが苦手で瞑想ができない方にも、おすすめの動作課題があります。
 
身体をまっすぐタテにすることをおぼえると、
心がしゃきっとして、自分自身の存在感を感じるようになり、
元気が溢れてくるのを感じられるでしょう。
身体のタテ軸が出来ることは、心にもしっかりとした軸をつくるための準備になります。 
 
心の歪みは、身体の歪みとなって反映されることも少なくありません。
長年無理のある生き方をしていると、
身体にも長年無理がかかって不調になるでしょう。
だから、身体を弛めることは、心の健康のためにとても大切なことです。
気軽に体験して、身体のあり方、動作に気づいて、自分の身体と仲良しになってください。
 

臨床動作法の紹介記事
『セラピスト10月号』記事より (動画あり)

臨床動作法に関するよくある質問と回答

 
Q1.臨床動作法とは何ですか?
 
 臨床動作法とは、身体の動作に働きかけることによって、心身の改善・解決、さらに健康増進を促す心理学的援助法です。 臨床動作法は、細かく分類すると、動作訓練、高齢者動作法、教育動作法、スポーツ動作法、健康動作法、治療動作法があり、幅広い対象の人に実施可能で、各領域で広がりつつあります。また、臨床動作法は成瀬悟策氏創始の日本の心理療法ですが、各地で盛んに臨床実践と研究が行われており、現在世界に広がりつつある定評のある技法です。
 
 
 
Q2.臨床動作法を受けると、どんな体験ができるのでしょうか?
 
 臨床動作法のセッションを重ねると、しばしば次のような肯定的な心身の体験が訪れます。
 
 ・・・リラックスして安心している感じ、今ここに自分がいるという感じ、本来の自分のエネルギーが出てくる感じ、それを活かせる感じ、自分のからだや自分自身についての確かな感じ、自分の近い将来を肯定的に思える感じ、困難や不安なことにチャレンジできる感じ、など。
 
 これらの体験は、心の問題を解決したり、成長するために、プラスに働くことはいうまでもありません。
 
 
 
Q3.臨床動作法は、どんな風に進めていくのですか?
 
 臨床動作法は、セラピストが提供する動作課題をゆっくり実践しながら進めていきます。はじめはセラピストの補助のもとで、ひとつひとつを体験していきます(覚えてしまえば、一人でできる課題もあります)。動作課題は、顔、首、背中、腕、腰、脚部など、全身に対応したものがあります。動作課題を達成していく過程で、身体に入っている無駄な緊張に気づき、その力を抜いていくことを覚えていきます。このような気づきが深まってくると、日常生活でも無意識のうちに入ってしまう身体の力に気づき、自分で力を抜くことができるようになります。 
 
 
Q4.無駄な緊張とはどんなものですか?
 
 身体に知らず知らずのうちに入っている力は、しばしばこころの緊張とつながっている場合があります。こころの緊張によって無意識に連続的に入れている力は、身体の慢性緊張となって現れます。慢性緊張があると、身体の一部が重い感じがしたり、凝っていたり、痛みを覚えたりすることがあります。身体の各部分が、つながっていない感じや、地に足がついていない感じがするのも慢性緊張によるものです。動作法では、この自分で入れた力に気づき、動作を行いながら自分で抜いていくことを体験的に学ぶのです。
 
 
Q5.整体や鍼灸とはどう違うのですか?
 
 「自分で気づき、自分で力を抜く」というところが臨床動作法の特徴で、整体や鍼灸などの身体療法と根本的に異なる点です。動作法は、あくまでも動作の主体が、力を入れたり抜いたりすること(心理的プロセス)を目指すので、ただ横たわっていればセラピストが気持ちよくしてくれるというものではありません。  
 
 
Q6.「慢性緊張」とはなんですか?
 
 慢性緊張は、いつも緊張しているということなので、本人はこれが普通なのだと思い、まったく気づいていないこともあります。しかし、動作課題をやったり、姿勢を見たりすると、慢性緊張が現れて、分かりやすくなります。
 
 
Q7.姿勢が悪いのですが、これも良くなりますか?
 
 臨床動作法では、各部の力を抜くだけでなく、姿勢をまっすぐに立て、しっかりと大地に立つための技法もあります(「軸をたてる」といいます)。 軸がしっかりすると、生きる感覚もしゃきっとして、表情も締まってくる場合があります。特に、猫背気味の方や、うつ傾向のある人には、心の活性化に加えて、姿勢の改善にもつながり、おすすめです。
 
 
Q8.心理相談に来たのに、身体に働きかけるのはなぜですか?
 
 心と身体は、非常に密接な関係を持っていて、つねに車の両輪のようです。
 臨床動作法では、「動作は生き方である」と考えるので、動作を変えることは生き方を変えることだと考えます。
 臨床動作法によって筋緊張を弛めていると、突然いろいろな感情が湧き上がってきたり、過去の記憶が蘇ってきたり、夜の夢が活発になる場合があります。これは、まさに筋緊張という在り方に閉じこめれれた記憶や感情が解放されているのだと考えられます。 
 
 
Q9.体を動かすことは苦手なのですが大丈夫でしょうか? 痛くはありませんか?
 
 臨床動作法は、誰にでもできる非常にわかりやすい技法で、ほとんどの方が無用な緊張感などの新たな気づきや発見を実感をもって体験することができます(気功、ヨーガ、座禅、武術、エネルギーワークなどで挫折した人も、たいていは大丈夫です)。
 反対に、普段運動をしている人でも、無駄な力が入っていたり、慢性緊張がある場合は少なくありません。一部の運動選手は、スポーツ動作法をコンディショニングに取り入れています。 
 臨床動作法では、痛い体験は基本的にありません(一時的な痛みが出ることはありますが、すぐになくなります)のでご安心ください。
 
 
Q10.どんな人が臨床動作法を受けると効果があるのですか?
 
 臨床動作法は、緊張を抜くことを繰り返しますが、生きている限り誰でもストレスを受け続けているので、無駄な緊張と全く無縁という人はなかなかいないので、ほとんどの人に意味がある方法です。臨床動作法は、骨粗鬆症などの骨格系に問題のある方以外ならば、ほとんどどなたでもうけることができます。特に、
 
 何事にもがんばりすぎてしまう方、
 軽いうつ状態の方、
 人といるといつも身構えてしまう方、
 緊張しやすくリラックスできない方、
 気遣いばかりして合わせてばかりの方、
 現実に生きているという感じが希薄な方、
 非現実的な世界に生きている方(地に足のつかない感じの方)、
 自己肯定感がもてない方(健全な自尊感をもてない方)、
 自己抑制の強すぎる方(自分に厳しすぎる方、まじめすぎる方)、
 猫背など姿勢が悪くて体調が悪い方、
 
などは動作法は比較的得意としており、効果を発揮する場合が多いといえます。
 また、臨床動作法は、心身の緊張を弛めて、ゆったりと安心したリラクセーションをもたらす効果があるので、催眠状態に入りにくい方には、事前のステップとして受けるとプラスの効果があります。
 
 
 
Q11.時間はどれくらいかかりますか?
 
 はじめはすこし時間が掛かるかもしれませんが、慣れてくれば、10分~30分程度でも十分力を抜いてリラックスできるようになります。
 
 
Q12.一人では不安なので、付き添いに見てもらってもよいでしょうか?
 
 臨床動作法は、パートナーやご両親など、付き添いの方が参加されてもかまいません。やり方を覚えたい方には、簡単にできるものをその場でお教えしますので、帰ってから家で互いに動作法を行うこともできます。
 
 
 
Q13.どんな服装で受けたらいいのですか?
 
 臨床動作法を受ける場合には、動きやすい服装でいらしてください(スカートやタイトな服、シワをさけたいスーツなどは不向きです。別室にて着替えることもできます)。
 
 
[参考文献]
日本臨床動作学会編『臨床動作法の基礎と展開』コレール社、2000年
石川勇一『新・臨床心理学事典』コスモス・ライブラリー、2016年